2004/09/09 | 感動 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
人間の証明を観た・・・。 泣けたねぇ。 そこで、興味のある人向けに、 詳しいこの作品内の詩集を。 『麦藁帽子』 西条八十 母さん、ぼくのあの帽子どうしたでせうね? ええ、夏碓氷から霧積へいくみちで、渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ。 母さん、あれは好きな帽子でしたよ。 ぼくはあのときずいぶんくやしかった。 だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。 母さん、あのとき向こふから若い薬売りが来ましたっけね。 紺の脚絆に手甲をした。 そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。 だけどたうたうだめだった。 なにしろ深い谷で、それに草が背丈ぐらい伸びていたんですもの。 母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう? そのとき旁で咲いていた車百合の花は、もう枯れちゃったでせうね、 そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかもしれませんよ。 母さん、そしてきっといまごろは 今晩あたりは、あの谷間に、静かに霧が降りつもっているでせう。 昔、つやつや光ったあの伊太利麦の帽子と その裏にぼくが書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに寂しく。 明日は、世界の中心か・・・。 また、泣きそうだ。
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